りけいのり

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【科学一般】紅葉の仕組みに迫る

本日も、りけいのりからお届けします。

 

今回のテーマは、紅葉の仕組みです。

秋の風物詩である紅葉は、山林を鮮やかに彩ります。

 

そんな植物も、やはり生き物。

生物学、化学、物理学の観点から、紅葉の仕組みを紐解いていきます。

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紅葉は何故起こる?

 

紅葉の色を決めるのは?

葉の色の化学

まずは、スタンダードな葉っぱの色から始めます。

あの緑色は、どのような物質に由来するのでしょうか。

 

これは、多くの方が葉緑体と答えると思います。

葉緑体は、細胞内に存在する器官 (細胞内小器官, オルガネラ) の一種で、光合成の拠点となります。

 

 

 

葉緑体といえど、それ自身は分子により構成されています。

そこで、葉緑体を彩る物質に迫ります。

 

 

 分子レベルにて、葉の色はクロロフィルと呼ばれる物質に由来します。

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クロロフィルa 1) およびクロロフィルb 2) の構造

クロロフィルは、分子中に中心金属としてマグネシウムを有する分子です。

環状の共役系を有することで、可視光域における光の吸収を起こします。

(共役系とは、単結合と二重結合が交互に繰り返されるような構造的性質です)

 

クロロフィルには大別するとクロロフィルa(青緑色)とクロロフィルb(黄緑色)が存在し、存在比は重量ベースで約3:1となっています3)。構造を見ると、互いに非常に似ていることがわかります。

 

さらに、クロロフィルたちにタンパク質が結合することで、様々な彩を与えています3)

 

 

葉の色を決定するもう一つの要因は、カロテノイドです。

カロテノイドとは、自然界の動植物に広くみられる色素分子の一群を指し、黄色あるいは赤色であることが特徴です4)

 

カロテノイドは、

  • βカロテンに代表されるカロテン
  • ルテインに代表されるキサントフィル

によってなります。βカロテンは、おなじみニンジンの色ですね!! 3)

 

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βカロテン 5) とキサントフィル 6) の構造

構造に注目すると、いずれの分子もクロロフィルと同様に共役系を有していることが確認できます。

 

葉っぱの全体としての色は、クロロフィルカロテノイドによって決まっており、特に夏場などはクロロフィルの量が優先されるため、青々とした葉っぱとなります。

 

今までの議論から、紅葉にもクロロフィルカロテノイドが関係してきそうです。

季節の移り変わりとともに落葉が始まりますが、そこにはダイナミックな生化学の世界が広がっています

 

ここで重要なのは、クロロフィルカロテノイドの分解反応。

 

特に、優先的だったクロロフィルaは構造変化を受けやすく、すぐに変質します。

その後、中心金属のマグネシウムが抜けたり、様々な化学変化を辿って、最終的には無機化合物になっていきます。

 

 

紅葉の化学

クロロフィルやカロテノイドの分解だけでは、葉が紅色になることを説明できません

それでは、葉の紅変を担うのはどのようば物質でしょうか。

 

それは、アントシアニンフロバフェンと呼ばれる多環芳香族です。アントシアニンは、紫キャベツに含まれていたり、お菓子のねるねるねるねに利用されてます。

 

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アントシアニン前駆体 7) とフロバフェン前駆体 8)

アントシアニンやフロバフェンは、環状構造を持つ前駆体の重合と化学修飾により生成される色素です。

 

では、わざわざ新たな色素を生産する意味はどこにあるのでしょうか。

 

それは、冬になることで日照時間が減少することに関係しています。日照時間の減少は、光合成の推進力が減少することに直結します。すると、夏ほどにはクロロフィルが必要でなくなり、クロロフィルの分解反応が生じます。そこで、光エネルギーが外部から加わるとクロロフィル分解の際に活性酸素が生じやすくなります8)

 

活性酸素種は、酸化ストレスのもととなる化学種を指します。

 

そこで、この光化学反応を抑えるべく、高エネルギーな青色の波長の光を吸収するアントシアニンが生成されるそうです8)

 

 生体防御の仕組みとして、紅葉は存在するんですね

 

 

本記事は、"大谷俊二(1985), 紅葉の化学3)"を参照いたしました。紅葉に関する詳細な情報が詰め込まれていますので、興味のある方は是非ご一読ください。

 

 おわりに

今回は、

  • 葉色の由来
  • 葉色の変色の原理
  • 紅葉の仕組み

にまつわる色々をお話してみました。

 

秋の葉の中では、本当にダイナミックな化学変化が起こっていて、それを風物詩として楽しんでいたわけですね。

 

やっぱり目で見て分かる化学反応は面白いですね!!!

以上、りけいのりがお届けしました。

 

参考文献

1) PubChem, Access: 20200905.

pubchem.ncbi.nlm.nih.gov

2) PubChem, Access: 20200905.

pubchem.ncbi.nlm.nih.gov

 

3) 大谷 俊二 (1985), 紅葉の化学, 化学と生物, 1985, 23(11), 701-708, https://doi.org/10.1271/kagakutoseibutsu1962.23.701.

www.jstage.jst.go.jp

 

4) 厚生労働省, カロテノイド | e-ヘルスネット, Access: 20200905. 

www.e-healthnet.mhlw.go.jp

 

5) PubChem, Access: 20200905.

pubchem.ncbi.nlm.nih.gov

 

6) PubChem, Access: 20200905.

pubchem.ncbi.nlm.nih.gov

 

7)  PubChem, Access: 20200905.

pubchem.ncbi.nlm.nih.gov

 

8) PubChem, Access: 20200905.

pubchem.ncbi.nlm.nih.gov

 

9)

秋になると、なぜ紅葉するのか