りけいのり

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【科学一般】ホルモンとフェロモンの科学 (Part1)

本日も、りけいのりからお届けします。

 

今回のテーマは、ホルモンフェロモンについて。あなたは、これらの違いについて説明できますか?

 

普段の生活では意識することがないこの物質は、コミュニケーションにおいて超重要なんです。本日は、そんな化学コミュニケーションの世界にお連れしましょう。

 

今回の記事では、ホルモンとフェロモンの概観について触れた後で、ホルモンの世界に迫ります。次回の記事では、フェロモンにより交わされる生物間のコミュニケーションについてお話します。

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ホルモンとフェノモンの概観

ホルモンとフェロモンはいずれも、生物の代謝 (体内で引き起こされる化学反応)に対して影響を与え、時に個体群集の動態にも影響を及ぼします。

 

ここで、、

  • ホルモン (Hormone): 産生された部位とは異なる部位にて特異的な生理活性を示すような有機化合物
  • フェロモン (Pheromone): ある種の生物から分泌され、同一種の他の個体に対して影響を及ぼすような有機化合物

という生理活性物質としての定義ができます1)

 

ここで、これらの物質についての語源に迫ってみましょう。

  • ホルモン: ホルマオ(ギリシャ語)→刺激する, 呼び覚ます2)
  • フェロモン: "pherein (ギリシャ語)→運ぶ"とホルモンの合成語3)

という風に、フェロモンはホルモンから生じた言葉であると言えます。ここで、図によりフェロモンとホルモンの概要をまとめてみましょう。

 

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ホルモンとフェロモンの違い

作用範囲がそれぞれ異なる生理活性物質であると言えます。

  • ホルモン: 個体内にて作用
  • フェロモン: 個体間にて作用

それでは、次にホルモンとフェロモンの各論に移ります。

 

 

ホルモンとフェロモンの利用例

まずはじめに、人体内での代謝をつかさどるホルモンについてです。ホルモンバランスという言葉があるように、我々の体調や気分に日々大きな影響を与えているホルモン。どのような形をしているのでしょうか。

 

もっとも一般的なのは、化学構造的にもわかりやすい、ステロイドホルモンです。ステロイドとは、ステロイド骨格と呼ばれる多環性の炭化水素骨格に由来する名前です。

(この骨格の正式な名称は、シクロペンタノペルヒドロフェナントレンです4)。長い。)

 

以下に、ステロイド骨格と代表的なステロイドホルモンを示します。

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ステロイド骨格4)と代表的なステロイドホルモン

エストロン構造5), テストステロン構造6)コルチゾール構造7)

このように、化学的に共通の構造を持つ物質が、男性ホルモンや女性ホルモン、ストレスホルモンなど、多彩な生理活性を有するのは面白いですよね!!

 

男性ホルモンと女性ホルモンの構造が、めちゃめちゃ少ししか違わないもんで、感動して鼻血出そうになったのを覚えてます。このような原子レベルの構造を認識する、レセプター(受容体)にその凄みがあるのかも?

 

ステロイドホルモンの他にも、構造的な特徴によって、

というホルモンが存在します8)

 

ペプチドとは、アミノ酸が数十個程度結合して生成される化合物を指し、タンパク質よりは小さいものを指します。代表例としてはインスリンなどが挙げられます。

 

アミノ酸誘導体とは、アミノ酸が化学反応を受けることで生成する化合物の一群です。代表例としては、アドレナリンやチロキシンが挙げられます。

 

プロスタグランジとは、炭素数20の有利脂肪酸より誘導されるホルモンであり、低濃度にて非常に強い生理活性を示します9)。また、プロスタグランジンは、その化学修飾の種類によって、様々な生理活性を発現します。

 

以下に、ペプチドホルモン、アミノ酸誘導体ホルモン、プロスタグランジンの代表例を示します。

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様々な構造と機能を有するホルモン

インスリン 10), アドレナリン11), プロスタグランジン D2 12)

おわりに

いかがでしたか? 本記事では、主にホルモンにフォーカスしたお話をしました。本日紹介したいずれの化合物も、今皆さんの血中を駆け巡り、生命維持の手助けをしています。ホルモンは、臓器から臓器への手紙のようですね。

 

次回は、フェロモンの生理活性に焦点を当ててお話するので、お楽しみに!!

りけいのりからお届けしました。

参考文献

1) 森謙治 (1986), 生物活性物質の化学 : ホルモンとフェロモンの話(化学への招待), 化学教育, 34(6), 480-483, https://doi.org/10.20665/kagakukyouiku.34.6_480.

www.jstage.jst.go.jp

2) 語源由来辞典、ホルモン、Access: 20200912.

gogen-allguide.com

3) 語源由来辞典、フェロモン、Access: 20200912.

gogen-allguide.com

4) 猪川嗣朗 (2000), ステロイドホルモンの生合成と代謝, 臨床化学, 29(1), 2-14, https://doi.org/10.14921/jscc1971b.29.1_2. 

www.jstage.jst.go.jp

 

5) PubChem, Access: 20200912.

pubchem.ncbi.nlm.nih.gov

6) PubChem, Access: 20200912.

pubchem.ncbi.nlm.nih.gov

7) PubChem, Access: 20200912.

pubchem.ncbi.nlm.nih.gov

8) ホルモンについて, 日本内分泌学会, Access: 20200912.

www.j-endo.jp

9) 塩 栄夫 (1973), プロスタグランジン, 化学と生物, 11(11), 699-704, https://doi.org/10.1271/kagakutoseibutsu1962.11.699. 

www.jstage.jst.go.jp

10) PubChem, Access: 20200912.

pubchem.ncbi.nlm.nih.gov

11) PubChem, Access: 20200912.

pubchem.ncbi.nlm.nih.gov

12) PubChem, Access: 20200912.

pubchem.ncbi.nlm.nih.gov